居酒屋の焼き場は難しくない|実は焼き鳥が一番簡単。覚える順番と唯一の難所

厨房技術

「居酒屋の焼き場」と聞くと、どんな場面を思い浮かべるでしょうか。

炭火の前で汗をかきながら、串を返し続ける職人——たぶん、そんなイメージだと思います。私も入る前はそう思っていました。

でも、チェーン居酒屋の焼き場は、正直そんなに難しくありません。

今回は、実際に焼き場を担当していた立場から、その実態と「覚える順番」を書きます。これから居酒屋で働く人、焼き場に配属された人の不安が、少し軽くなればと思います。

まず前提:チェーン店の焼き場に「仕込み」はない

いきなり身も蓋もない話をします。

チェーン居酒屋の焼き場には、専門料理店のような仕込み作業がありません。

  • 焼き鳥を串に刺す作業がない
  • 魚をさばく作業もない

なぜかというと、セントラルキッチンで加工されたものが、そのまま店に納品されてくるからです。串は打たれた状態で届き、魚は開いた状態で届く。店でやるのは、焼くことだけです。

これは手抜きではなく、チェーンとして味を揃えるための仕組みです。どの店で頼んでも同じものが出てくるのは、この方式のおかげでもあります。

つまり、焼き場担当に求められるのは「焼く技術」だけ。覚える範囲がぐっと狭いんです。

だから、最初から何でも焼いてもらう

この前提があるので、私は新人に対して最初から全部焼いてもらっていました。

「まずは洗い物から」「半年は見て覚えろ」みたいな段階を踏みません。焼くだけなら、その日から手を動かせるからです。

覚えるべき原則も、実はそんなに多くありません。私が伝えていたのは、この4つくらいでした。

  • 海の魚は身から、川の魚は皮から焼く
  • 提供する面から先に焼く
  • イカは皮から焼く
  • 提供時は頭が左に来るように盛る

このあたりの理屈は焼き魚の鉄則の記事で詳しく書いたので、そちらを見てください。逆に言えば、これさえ頭に入れば焼き場は始められます。

難易度の順番:実は焼き鳥が一番簡単

とはいえ、焼くものによって難しさは違います。私の体感での順番を、難しい順に並べるとこうなります。

順位 品目 ひとこと
1(最難) シシャモ 小さくて繊細。網に張り付く
2 ほっけ 大きく厚みがあり、火の通りに時間がかかる
3 イカの一夜干し 反りやすく、焼き加減が読みにくい
4 焼きおにぎり 崩れやすい
5 鉄板もの(コーンバター・餃子など) 手順が決まっていて安定
6(最易) 焼き鳥 一番簡単

意外に思われるかもしれません。焼き鳥こそ職人技というイメージがありますから。

でも、チェーン居酒屋では逆です。串は均一に打たれた状態で届くので、大きさも厚みも毎回ほぼ同じ。同じ時間、同じ火加減で焼けば、同じものが出来上がります。数をこなす場面が多いぶん、慣れるのも一番早い。

なぜシシャモが一番難しいのか

逆に一番てこずるのが、あの小さなシシャモです。

理由は単純で、小さくて薄いから、失敗の余地がないんです。ちょっと火が強ければ焦げ、ちょっと触れば身が崩れる。そして何より、網に張り付きます。

私自身、焼き場に入った初日にこれをやりました。網が温まりきっていない状態でシシャモを乗せてしまい、身が網にべったり張り付いて、ボロボロに崩れたんです。あの光景は今でも覚えています。

一番小さくて安い魚が、一番難しい。 焼き場の面白いところです。

唯一の難所は「同時に来たとき」

ここまで「難しくない」と書いてきましたが、ひとつだけ難所があります。

オーダーが一度にたくさん入ったときです。

焼き物は、品目によって火の通る時間がバラバラです。焼き鳥が焼けるうちに、ほっけはまだ半分。それを何組ぶんも同時に抱えることになります。

やるべきことは、当たり前ですが、これに尽きます。

時間のかかるものから、先に網に載せる。

ほっけのように時間のかかるものを先に置き、その間に焼き鳥や鉄板ものを回す。全部が同時に仕上がるように逆算する——これが焼き場の腕の見せどころです。

技術というより、段取りの問題です。だからこそ、開店前の仕込みの段取りと同じで、慣れれば必ずできるようになります。

どれくらいで一人前になれるか

気になるところだと思うので、正直に書きます。

5日ほど入れば、焼き場は任せられるようになります。

これは決して大げさな話ではありません。仕込みがなく、覚える原則も4つ程度。あとは焼くものの種類ごとに時間感覚を身につけるだけだからです。

新人教育は最初の3日が勝負と別の記事で書きましたが、焼き場に関して言えば、そこからあと2日で戦力になります。

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記事で「焼き鳥がいちばん簡単」と書きましたが、家でのハードルは焼くことより串打ちです。冷凍の串セットなら、その面倒な部分が全部済んだ状態で届くので、あとは焼くだけ。条件の揃った串を並べて焼く——店の焼き台と同じ理屈が、家の魚焼きグリルでも再現できます。

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まとめ

  • チェーン居酒屋の焼き場に仕込みはない。串打ちも魚さばきもなく、焼くだけ
  • だから最初から全部焼いてもらう。段階を踏む必要がない
  • 難易度は シシャモ > ほっけ > イカ一夜干し > 焼きおにぎり > 鉄板もの > 焼き鳥
  • 焼き鳥が一番簡単。串が均一なので、条件を揃えれば同じものが焼ける
  • 唯一の難所は同時オーダー。時間のかかるものから先に載せる
  • 5日ほどで一人前になれる

焼き場に配属されて不安な人へ。あなたが想像しているほど、難しい持ち場ではありません。

最初の数日で、たぶん拍子抜けすると思いますよ。

この記事を書いた人
店長ほりちゃん

店長ほりちゃん|チェーン居酒屋 正社員10年・元店舗責任者

22歳で入社。接客が大の苦手で厨房に逃げ込んだところから、人手不足でホールに駆り出され、3ヶ月で代行責任者、3年で店舗責任者へ。調理・接客・計数管理・スタッフ教育まで、店を丸ごと回す10年を過ごしました。

このブログでは、「いらっしゃいませ」も言えなかった人間がどうやって店長になったのか、その現場のリアルを書いています。

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