【元居酒屋の焼き場が語る】焼き魚は「海は身から、川は皮から」|最初に叩き込まれた鉄則と、シシャモ大失敗

厨房技術

焼き魚って、どっちの面から焼けばいいか知っていますか?

「考えたことなかった」という人がほとんどだと思います。実は居酒屋の焼き場には、新人が最初に叩き込まれる答えがあります。

「海は身から、川は皮から」

私が焼き場に入った初日に教わった言葉です。海の魚は身の面から、川の魚は皮の面から焼く。たった一言ですが、この中に焼き物の考え方が全部詰まっています。

この記事では、この鉄則の意味と、セットで教わった原則、そして私がやらかしたシシャモの大失敗まで、現場のリアルをお伝えします。家庭のグリルでもそのまま使える話です。

この記事を書いた人

名前 店長ほりちゃん
経歴 チェーン居酒屋 正社員10年
入社時 22歳。接客が大の苦手
その後 3ヶ月で代行責任者 → 入社3年で店舗責任者
得意分野 調理・接客・計数管理・スタッフ教育

焼き場デビュー初日に教わった一言

厨房の中でも、焼き場は独特の場所です。揚げ物のようにタイマーは頼れず、火加減と時間の感覚がモノを言う。そこに入った初日、先輩に言われたのがこれでした。

「海は身から、川は皮から」

  • 海の魚(サバ、ホッケ、鯛の切り身など)→ 身の面から焼き始める
  • 川の魚(アユ、ヤマメ、イワナなど)→ 皮の面から焼き始める

じゃあ、なぜそうなるのか。

理屈はシンプル。「先に焼いた面が、料理の顔になる」

焼き物は、最初に焼いた面がいちばんきれいに焼き上がります。後から焼く面は、火力も落ち着いてくるし、返すときに崩れたり焦げムラが出たりしやすい。

そして魚には「お客さんに見せる面」があります。

  • 海の魚の切り身は、身を見せて盛り付けることが多い → 身から焼く
  • 川魚は姿焼きで、香ばしい皮を見せる → 皮から焼く

つまりこの格言の正体は、魚の種類の暗記ではなくて、もっと大きな原則なんです。

「提供面(お客さんに見せる面)から先に焼く」

これが焼き場の本当のルール。「海は身から、川は皮から」は、その原則を魚に当てはめた覚え歌みたいなものです。だから応用も効きます。

  • イカは皮から。これも同じ理屈です
  • 迷ったら「この料理、どっちの面を上にして出すんだっけ?」と考えれば答えが出る

セットで教わった盛り付けの決まり:頭は左

焼き上がった魚をお皿に乗せるときにも決まりがあります。

魚の頭は、左。

和食の基本で、「頭左(かしらひだり)」と呼ばれる作法です。焼き魚の姿づくりは頭が左、腹が手前。居酒屋のスピード勝負の現場でも、ここは崩しません。逆向きで提供したら、分かるお客さんには一発で「素人が焼いたな」とバレます。

家庭でも、頭を左にして出すだけで食卓の焼き魚がちょっと「店の顔」になりますよ。

焼き加減は、どこで見極めるか

鉄則を覚えたあと、次にぶつかるのが「いつ返すか、いつ上げるか」です。

タイマーは目安にはなりますが、魚は個体差があります。厚み、脂の乗り、その日の火力。だから最後は目で見て判断することになります。

私が見ていたのは、この2つです。

① 色

いちばん分かりやすい指標です。焼き色がどこまで入ったか。全体が均一に色づくのを待つのではなく、縁のほうから色が変わっていく速度を見ます。

ここで焦って早く返すと、色がつききらないまま身が崩れます。家庭での焼き魚でも同じで、待てるかどうかが仕上がりを決めます。

② 水分と脂の出方

そしてもうひとつが、表面に出てくる水分と脂です。

火が入ってくると、身の表面にじわじわと水分や脂が浮いてきます。この出方が、中の火の通り具合を教えてくれる。ほとんど出てこないうちはまだ早く、表面がしっとりしてきたら中まで熱が届いている合図です。

魚の種類によって出方は違います。脂の多いほっけと、あっさりしたシシャモでは、見るべきポイントが変わる。何度も焼いて、種類ごとの「顔」を覚えていくしかありません。

色と、水分・脂の出方。この2つを見る癖をつけると、タイマーに頼らなくても焼けるようになります。

シシャモ、網に張り付いてボロボロ事件

さて、偉そうに鉄則を語ってきましたが、私の失敗談です。

ある日、焼き網が温まっていない状態でシシャモを並べてしまいました。焼き上がったのでひっくり返そうとしたら——

張り付いている。

無理に剥がしたら、皮も身も網に持っていかれてボロボロ。シシャモの原型がない。商品になりません( ;∀;)

原因ははっきりしています。冷たい網に魚を乗せたこと。

網が十分熱くなっていれば、乗せた瞬間に魚の表面がすっと固まって、くっつきにくくなります。逆に冷たい網だと、温度がゆっくり上がる間に魚の表面が網と一体化してしまう。剥がれないのは魚のせいじゃなくて、焼き手のせいなんです。

だから鉄則がもうひとつ増えました。

「魚を乗せる前に、網を先に焼け」

家庭のグリルやフライパンでも全く同じです。予熱をサボると、シシャモでもサンマでも張り付きます。焼き始める前の1〜2分の予熱が、盛り付けの美しさを決めます。

まとめ:焼き場の鉄則3つ

  1. 海は身から、川は皮から。正体は「提供面から先に焼く」という原則。イカは皮から
  2. 頭は左。盛り付けまでが焼き物
  3. 網は先に熱しておく。冷たい網に乗せた魚は帰ってこない

焼き魚は特別な技術より、こういう「順番」を守るだけで見違えます。今晩の焼き魚から、ぜひ提供面と予熱を意識してみてください。

この記事を書いた人
店長ほりちゃん

店長ほりちゃん|チェーン居酒屋 正社員10年・元店舗責任者

22歳で入社。接客が大の苦手で厨房に逃げ込んだところから、人手不足でホールに駆り出され、3ヶ月で代行責任者、3年で店舗責任者へ。調理・接客・計数管理・スタッフ教育まで、店を丸ごと回す10年を過ごしました。

このブログでは、「いらっしゃいませ」も言えなかった人間がどうやって店長になったのか、その現場のリアルを書いています。

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