居酒屋社員を続けられる人・辞めていく人|半分が辞めていく世界で見えたこと

キャリア・裏話

居酒屋の正社員として10年働く間に、たくさんの同期や後輩を見送りました。

体感で言います。だいたい半分は、辞めていきました。

脅すつもりはありません。ただ、これから飲食の正社員になる人には、きれいな求人票より先にこの数字を知っておいてほしい。そして同時に、残った半分は何が違ったのかも。

10年見てきた「辞める人・続く人」の話です。

辞める理由の筆頭は、やっぱり「勤務時間」

辞めていった人の理由で、いちばん多かったのは何か。

人間関係でも、給料でもありません。勤務時間の長さです。

以前の記事で書いたとおり、私の基本シフトは15時出勤・翌朝5時退勤でした。労働時間そのものもさることながら、生活が世間と真逆になる。友人と休みが合わない、家族と時間が合わない、昼間の用事が済ませられない。

仕事の内容がきつくて辞める人より、この生活を何年も続ける想像ができなくなって辞める人のほうが、ずっと多かった印象です。

最初の壁は「半年」

では、いつ辞めていくのか。

私の体感では、半年くらいが最初の山でした。

理由を考えると、これは腑に落ちます。入社してしばらくは、覚えることに追われて無我夢中です。それが半年もすると、仕事がひととおり回るようになる。すると初めて、自分の生活を冷静に見る余裕が生まれるんです。

夜型の生活、長い勤務時間、世間とずれた休日。「これをあと何年やるのか」——その問いに向き合うのが、ちょうど半年あたり。ここを越えられるかどうかが、最初の分かれ目でした。

続く人の共通点は、技術やなくて「人間関係」

逆に、続いた人は何が違ったのか。

料理の腕でも、接客の上手さでもありません。私が見てきた限り、いちばんはっきりした共通点はこれです。

他の従業員と仲良くなれた人は、続く率が高い。

考えてみれば当たり前で、しんどい仕事を支えるのは、結局その場の人間関係です。同じ深夜のピークを一緒に戦って、閉店後に「今日きつかったな」と笑い合える相手がいるかどうか。仕事のしんどさは変えられなくても、しんどさを分かち合える環境は作れるんです。

勤務時間で辞めていく人が多い世界で、それでも残る人は、たいてい店の中に居場所がありました。

職場に居場所を作る、具体的な方法

「仲良くなれと言われても、それが苦手なんだ」——分かります。私自身、接客が苦手で厨房に逃げ込んだ人間です。

でも、居場所づくりに社交の才能は要りません。私が新人時代にやっていて、後に新人にも勧めていたのは、この2つだけです。

① 手が空いたら「何かやることありますか?」と聞く

始めのうちは、とにかく何でも聞く。分からないことを聞くのはもちろん、手が空いたら「何かやることありますか?」と自分から聞きに行く。

ポイントは、ちょっと苦手だなと思う相手にも聞くことです。苦手な先輩を避けていると、その人との距離は一生縮まりません。でも「何かやることありますか?」は、雑談が苦手でも言える魔法の一言です。仕事の話だから話しかけやすいし、聞かれた側は確実に悪い気がしない。

この一言を全員に等しく使っているだけで、「あの子はよく動く」という評判と一緒に、居場所が勝手にできていきます。

② 笑顔は、従業員の間でも効く

そしてもうひとつが笑顔です。

お客さんへの笑顔の話は何度も書いてきましたが、実は笑顔は従業員同士でも有効なんです。

ニコニコしている新人と、無表情の新人。教える側から見て、声をかけやすいのは圧倒的に前者です。つまり笑顔でいるだけで、教えてもらえる機会が増え、人間関係ができるのが早くなる

お客さん向けに身につけた「型」が、そのまま職場の居場所づくりにも効く。一石二鳥です。

私にも「辞めよかな」の時期はあった

正直に書いておきます。10年の中で、私にも辞めることが頭をよぎった時期があります。

意外かもしれませんが、それは新人時代のしんどい頃ではありません。店舗責任者になって、自分のやり方が出来上がり、結果も出ていた頃です。

自分なりの店の回し方が固まって、数字もついてきている。それなのに、上司であるエリアマネージャーと、店づくりの方向性がどうしても噛み合わない——そういう時期がありました。

新人の頃は「できない自分」が悩みの種でした。でもキャリアが進むと、悩みは変わるんです。「できるようになった自分のやり方」と、組織の方針がぶつかる。 これは飲食に限らず、どの仕事でも中堅が必ず通る道だと思います。

私はそれでも残りました。給料と趣味の車、そして刺し場という好きな持ち場があったからです。辞める理由が一つあっても、残る理由がそれを上回っていれば人は続く。結局、その足し算なんだと思います。

まとめ

  • 居酒屋の正社員は、体感で半分が辞めていく世界
  • 理由の筆頭は勤務時間。仕事のきつさより「この生活を続ける想像」ができなくなる
  • 最初の山は半年。仕事に慣れて、生活を冷静に見る余裕が出た頃
  • 続く人の共通点は人間関係。しんどさを分かち合える居場所があるか
  • 居場所づくりは2つだけ:「何かやることありますか?」を苦手な人にも笑顔は従業員間でも効く
  • 中堅になれば悩みは変わる。辞める理由と残る理由の足し算で人は決まる

半分が辞める世界、と書きました。でも裏を返せば、半分はちゃんと続いているということです。

その差は才能ではなく、居場所でした。そして居場所は、一言と笑顔で作れます。


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この記事を書いた人
店長ほりちゃん

店長ほりちゃん|チェーン居酒屋 正社員10年・元店舗責任者

22歳で入社。接客が大の苦手で厨房に逃げ込んだところから、人手不足でホールに駆り出され、3ヶ月で代行責任者、3年で店舗責任者へ。調理・接客・計数管理・スタッフ教育まで、店を丸ごと回す10年を過ごしました。

このブログでは、「いらっしゃいませ」も言えなかった人間がどうやって店長になったのか、その現場のリアルを書いています。

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