「いらっしゃいませ」の一言が、どうしても言えない。
飲食店で働き始めた人、これから働こうか迷ってる人で、これに悩んでる人は実はかなり多いです。声を出そうとすると喉が締まる。周りの元気な声を聞くほど、自分だけ浮いてる気がして余計に出なくなる。
断言します。それ、治ります。しかも根性や才能は要りません。
なぜ言い切れるかというと、私自身がそうだったからです。チェーン居酒屋に正社員として入社したのに、「いらっしゃいませ」が言えませんでした。その私が最後は店舗責任者として、声の出ない新人を教える側になりました。
この記事では、私がどうやって「最初の一言」を越えたか、実体験だけを書きます。
この記事を書いた人
| 名前 | 店長ほりちゃん |
| 経歴 | チェーン居酒屋 正社員10年 |
| 入社時 | 22歳。接客が大の苦手 |
| その後 | 3ヶ月で代行責任者 → 入社3年で店舗責任者 |
| 得意分野 | 調理・接客・計数管理・スタッフ教育 |
接客が苦手すぎて、厨房に逃げた
私は22歳でチェーン居酒屋に正社員として入社しました。
志望動機はいろいろありましたが、本音をひとつ言うと「厨房なら接客しなくていい」と思っていたからです。実際、最初の配属は希望どおり厨房。相手は調理だけ。声を出す必要もない。正直、快適でした。
でも居酒屋という商売は、そんなに甘くありません。
人手不足で、ホールに駆り出された
ある時期からホールの人手が足りなくなり、社員の私が駆り出されることになりました。
そこで直面したのが、冒頭の悩みです。
「いらっしゃいませ」と「ありがとうございました」が、言えない。
正確には、声にはなっています。でも、ぼそぼそ。お客さんに届いていない。届かせる気力が湧いてこない。恥ずかしいんです。理屈じゃなく、恥ずかしい。
そんな状態が1週間ほど続きました。
言えない人がやっている「逃げ方」を白状します
ここで、当時の私が実際にやっていたことを正直に書きます。読んでいて「うわ、自分もこれやってる」と思う人がいるはずです。
入口にお客さんの姿が見えると、私はさりげなくその場を離れていました。
- 料理やお酒を取りに行くふりをして、パントリーへ引っ込む
- 用があるような顔をして、人の少ない奥のほうへ移動する
サボっていたわけではありません。実際に仕事は運んでいます。でも本当の目的は、「いらっしゃいませ」を言う場面から離れることでした。
そのときの頭の中は、こんな感じです。
「あぁー、ダメダメ。いやだなー」
それだけです。深い理由なんてありません。ただただ、その一言を言う場面が嫌で、体が勝手に逃げる方向へ動いていました。
そして厄介なのは、この逃げ方が「仕事をしている」ように見えてしまうことです。手は動いている。足も動いている。誰にも怒られない。だから続いてしまう。
でも、一番しんどいのは自分です。逃げるたびに「またやってしまった」が積み重なる。言えない苦しさより、逃げ続ける自己嫌悪のほうがきつかったというのが本音です。
年下のアルバイトに、注意されまくった
見かねて注意してきたのは、店長ではなく古株のアルバイトさんたちでした。フリーターや大学生。私と年代の近い、でも現場歴は私よりずっと長い人たちです。
「声、出てないですよ」
言われたときの正直な気持ちを一言で表すと、「ですよねー」でした。
怒りも、悔しさも、あまり湧いてこなかった。なぜなら自分が一番よく分かっていたからです。声が出ていないことも、逃げていることも、全部バレている。指摘された瞬間に思ったのは「やっぱり気づかれてたか」という、妙に納得した感覚でした。
正社員がアルバイトに叱られる。プライドが傷つきそうなものですが、不思議と素直に聞けました。理由は2つあります。
- 年が近かったこと。先生というより「ちょっと先を行く同世代」だった
- そして何より、言われていることが間違っていなかったこと
これは今でも大事にしている考え方です。正しい指摘は、誰が言ったかで値打ちが変わらない。年下だろうがアルバイトだろうが、正しいものは正しい。ここで意地を張っていたら、私の接客はたぶん一生変わりませんでした。
転機は「これじゃだめだ!」と思った日
じゃあ何がきっかけで変われたのか。
ドラマみたいな話は、ありません。誰かが魔法の言葉をくれたわけでもない。ある時、自分で「これじゃだめだ!」と思った。それだけです。
そして思い切って、1回だけ、大きな声で「いらっしゃいませ」を言いました。
正直に白状すると、気持ちなんて全くこもっていません。教科書を音読してるみたいな、完全な棒読みでした。
でも、その1回で分かったことがあります。
言えた。言っても、死ななかった。
バカみたいな話ですが、本気でそう思いました。あれだけ高く見えていた壁は、1回越えてしまえばただの段差でした。
棒読みの1回目が、全部を変えた
ここが、この記事で一番伝えたいところです。
1度言えてしまえば、それ以降は問題なく言えるようになりました。
「少しずつ慣れていった」のではありません。あの1回を境に、普通に言えるようになったんです。あれだけ何日も苦しんだのに、越えてしまえば元に戻ることはありませんでした。
つまり、壁は1枚しかなかったということです。何十回も繰り返し努力して少しずつ削っていくような話ではなく、1回で抜ける壁だった。当時の私は、その1枚の壁を何日もかけて見上げていただけでした。
ただし、気持ちがこもり始めたのはずっと後です。順番はこうでした。
- まず棒読みで言えるようになる
- 言うのが当たり前になる
- 最後に、気持ちが追いついてくる
世間の接客指導は「心を込めて」から入りがちですが、苦手な人間は逆です。形が先、心は後。棒読み上等です。
今日からできる練習法:家で「いらっしゃいませ」を口癖にする
とはいえ、「1回言えば越えられる」と分かっていても、その1回が出ないから苦しいわけです。
そこで、私が今の自分に勧めるならこれです。
家で「いらっしゃいませ」を、口癖のように何度も声に出しておく。
やり方は簡単で、テレビを見ながらでも、風呂の中でも構いません。とにかくその言葉を口から出すことに慣れておく。ばかばかしく聞こえるかもしれませんが、これには理由があります。
なぜ家で練習すると効くのか
店で言えない一番の原因は、「言い慣れていない言葉」を「人前で」「初めて」使おうとしているからです。
この3つが同時に来るから難しい。だったら、そのうちのひとつを先に潰しておけばいい。
- 家なら、誰も見ていない。失敗しても恥ずかしくない
- 何度も言えば、口と喉がその形を覚える。考えなくても音が出るようになる
- 店で言うときが「初めて」ではなくなる。2回目以降として言える
本番前に、初回を家で済ませておく——そういう考え方です。
私自身は当時ここまで工夫できず、逃げて逃げて、最後に思い切りで越えました。でも今の自分が当時の自分に助言できるなら、間違いなくこれを勧めます。あんなに何日も苦しむ必要はなかったはずです。
今、声が出ない新人に伝えたいこと
その後、私は代行責任者になり、店舗責任者になり、今度は声の出ない新人を教える側になりました。だから両方の立場から言えます。
- きっかけは誰も持ってきてくれない。待っていても、声が出るようになる日は来ない
- 必要なのは根性じゃなく、棒読みでいいから1回だけ言うこと
- 1回言えたら、そこから先は普通に言える。壁は1枚しかない
- その1回が怖いなら、家で口癖になるまで言っておく。本番を「2回目」にしてしまう
- そして周りの先輩へ。注意してくれる人がいる職場は、実は当たりです。正しい指摘は、誰が言ったかで値打ちが変わらない
「いらっしゃいませ」が言えなかった正社員でも、店長になれました。
今、喉が締まっているあなたへ。気持ちは、こもってなくていい。まず1回だけ、音読してみてください。
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接客が苦手だった22歳が、チェーン居酒屋で店を任されるまでの10年
このブログに書いてきた10年を、一冊の物語としてまとめました。厨房に逃げた新入社員が、棒読みの「いらっしゃいませ」を境に変わっていくまで。ブログでは書ききれなかった話も入れています。
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