居酒屋の仕込みは何時から?|開店前2時間のリアルを元店長がタイムラインで公開

キャリア・裏話

17時、居酒屋の電気が点いて、BGMが流れ出す。

お客さんから見れば、そこが一日の始まりです。でも店の中の人間にとっては、そこはもう折り返し地点。開店の2時間前から、店の中では静かな戦いが始まっています。

この記事では、私が働いていたチェーン居酒屋の「開店前の2時間」を、タイムライン形式でそのまま公開します。飲食で働いてみたい人には予習として、お客さん側の人には「へえ、そんなことしてたんか」という裏側ツアーとして読んでもらえたら嬉しいです。

この記事を書いた人

名前 店長ほりちゃん
経歴 チェーン居酒屋 正社員10年
入社時 22歳。接客が大の苦手
その後 3ヶ月で代行責任者 → 入社3年で店舗責任者
得意分野 調理・接客・計数管理・スタッフ教育

出勤して、実は一番最初に触るもの

お湯の話をしましたが、その前にもうひとつ、必ずやることがあります。

厨房のネタケースの電源を入れる。

ネタケースというのは、刺身や寿司のネタを並べておく冷蔵ショーケースのことです。これを店に入って真っ先に入れる。

理由は単純で、冷えるまでに時間がかかるからです。人間が動けば数分で終わる作業と違って、機械が冷えるのは待つしかありません。だから「放っておけば勝手に進むもの」を一番先に始める。これは仕込みの鉄則です。

お湯を沸かすのも、ネタケースを冷やすのも、考え方は同じです。自分が動かなくても進んでいく仕事から、先に着手する。 開店前の2時間を回すコツは、ほぼこの一点に集約されます。

そして、その日に自分が特定の持ち場だけを担当するのでなければ、まずは調理場全体の準備から入っていきます。

15:00 出勤——最初の仕事は「お湯」

出勤して最初に向かうのは調理場です。そして一番最初にやるのは、派手な仕込みではなく——

お湯を沸かすこと。

お湯が沸かないと出汁が引けない。出汁ができないと煮物も汁物も始まらない。だから何はさておき、まず火にかける。それと並行して、店の「電源」を入れていきます。

  • 刺し場・厨房・焼き場の各セクションを立ち上げ
  • ネタケース(刺身の冷蔵ショーケース)の電源ON
  • 包丁・まな板のセット

道具と冷気の準備ができたら、出汁を引きながらお通し作り。ちなみにお通しは、昔は店で手作りしていました。規模が大きくなってからは出来合いのものに変わりましたが——正直、手作り時代のお通しの方が、作る側としては愛着がありましたね。

15:30ごろ 食材を「今日の場所」へ

次は食材の配置換えです。

  • コールドテーブル(作業台型の冷蔵庫)から食材を出して、ネタケースへ
  • サラダ用の野菜を洗う
  • マグロの解凍をスタート
  • 鯛とハマチをおろす

魚をおろすのはこの時間帯です。開店してからでは絶対に間に合わない。お客さんが最初の一杯を飲む頃にきれいな刺身が出てくるのは、開店2時間前におろしているからなんです(鯛のさばき方を覚えた話はこちら)。

16:00 ホールへ——生樽との格闘

ここから戦場がホールに移ります。

  • 各テーブルに皿を並べる
  • 納品された酒を片付ける——これが力仕事。特に生樽(生ビールの樽)が重い。あれを運ぶ日は、それだけで一仕事です
  • ドリンカー(ドリンク場)のセッティング
  • お通しの盛り付け
  • レジの電源ON・設定、レジ金(釣り銭)のセット

厨房が「味の準備」なら、ホールは「営業の準備」。皿一枚、釣り銭一枚まで揃って、初めて店は開けられます。

16:30 火入れ——フライヤーと焼き台

揚げ場と焼き場に火が入るのは、開店ギリギリです。

  • 開店30分前:フライヤー点火
  • 開店15分前:焼き台点火

早く点けすぎない理由は単純で、ガスと油がもったいないから。逆に遅れると最初の注文に間に合わない。この「30分前・15分前」というタイミングは、店の経験値が詰まった数字です。

16:50 看板を出す

開店10分前。店の外に看板を出します。

この瞬間がいちばん「始まるな」という感覚になります。看板は店の「起きてますよ」の合図。ここから10分で最終チェックです。

17:00 電気ON、BGM ON——開店

照明を点けて、BGMを流して、開店。

お客さんにとっての始まりの音楽は、店側にとっては「2時間の仕込みが終わった」合図でもあります。そしてここから閉店まで、また長い夜が始まるわけです(その勤務時間のリアルはこちら)。

開店前で、一番時間がかかる持ち場

ここまでいろいろ書いてきましたが、開店前で最も時間を食う場所を挙げておきます。

刺し場(刺身を担当する持ち場)の準備です。

やることが多いうえに、どれも手を抜けません。

  • サラダ野菜の準備——洗って、切って、水気を切って冷やしておく
  • 魚の柵どり——ブロックの状態から、刺身にできる形に整える
  • ネタケースの準備——冷えたケースに、ネタを並べていく

特に柵どりは時間も技術も要ります。ここを雑にやると、営業中に刺身がきれいに引けません。刺身は角を立てると別の記事で書きましたが、その角が立つかどうかは、実は開店前の柵どりで半分決まっています。

そして刺し場は、営業が始まってからでは絶対に取り返せない持ち場でもあります。焼き物は注文が入ってから焼けばいい。でも刺身は、切って出すだけの状態を作っておかないと、注文に間に合いません。

開店前の2時間で、その日の刺し場の勝負はついている。 だから私は、ここに一番時間を割いていました。

まとめ:開店前の2時間は「段取りの授業」

時刻 やること
15:00 出勤。お湯・出汁・各場の電源・包丁まな板・お通し
15:30 食材をネタケースへ。野菜洗い・マグロ解凍・鯛とハマチをおろす
16:00 ホールへ。皿・酒の片付け(生樽が重い)・ドリンカー・レジ金
16:30 フライヤー点火。15分前に焼き台点火
16:50 外の看板を出す
17:00 電気・BGM ON。開店

順番には全部理由があります。お湯が最初なのは出汁に時間がかかるから。火入れが最後なのはガス代のため。「時間のかかるものから着手して、コストのかかるものは最後」——この段取り感覚は、飲食を離れた今でも、どんな仕事にも効いています。

この記事を書いた人
店長ほりちゃん

店長ほりちゃん|チェーン居酒屋 正社員10年・元店舗責任者

22歳で入社。接客が大の苦手で厨房に逃げ込んだところから、人手不足でホールに駆り出され、3ヶ月で代行責任者、3年で店舗責任者へ。調理・接客・計数管理・スタッフ教育まで、店を丸ごと回す10年を過ごしました。

このブログでは、「いらっしゃいませ」も言えなかった人間がどうやって店長になったのか、その現場のリアルを書いています。

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