「接客って、明るい性格の人がやる仕事でしょ?」
そう思って接客業を避けている人、あるいは接客の仕事に就いてしまって困っている人へ。
私は「いらっしゃいませ」も言えなかった人間です。その私が店舗責任者になって、新人さんに接客を教える側になりました。そこで確信したことがあります。
接客はセンスじゃない。「型」です。
性格を変える必要はありません。明るい人間になる必要もありません。型を覚えて、その通りに動けばいい。むしろ接客が苦手な人ほど、型に素直に頼れるぶん伸びます。
この記事では、私が新人さんに実際に教えてきた4つの型を紹介します。最後の「ピエロになりなさい」まで読んでもらえたら、接客の気の重さが少し軽くなるはずです。
この記事を書いた人
| 名前 | 店長ほりちゃん |
| 経歴 | チェーン居酒屋 正社員10年 |
| 入社時 | 22歳。接客が大の苦手 |
| その後 | 3ヶ月で代行責任者 → 入社3年で店舗責任者 |
| 得意分野 | 焼き場・魚さばき・原価管理・スタッフ教育 |
型1:とりあえず、笑顔
ひとつ目は身も蓋もないですが、これです。とりあえず笑顔。
「心からの笑顔じゃなきゃ意味がない」なんてことはありません。声出しの記事でも書いたとおり、形が先、心は後。口角を上げた「形だけの笑顔」でも、お客様から見た印象は仏頂面と天と地の差です。
笑顔は感情ではなく、装備だと思ってください。出勤したら制服と一緒に着る。それだけでいいんです。
型2:呼ばれたら、絶対に無視しない
ふたつ目。どんなに忙しくても、お客様に呼ばれたら無視しない。必ず返答する。
「そんなの当たり前でしょ」と思いますよね。そう、当たり前なんです。でも現場では、忙しい時ほどこの当たり前ができなくなります。手が離せない、今行けない、だから……つい聞こえないふりをしてしまう。
ここが分かれ目です。お客様は「すぐ来ないこと」にはそこまで怒りません。怒るのは「無視されたと感じたとき」です。
だから、行けなくてもいい。「はい、少々お待ちください!」の一声だけ返す。これでお客様は「認識された」と分かって待てるんです。ゼロ秒でできる、最強のクレーム予防です。
型3:イライラしたお客様にも笑顔。裏でキレ顔はOK——「ピエロになりなさい」
3つ目が、私が新人さんに一番伝えてきた言葉です。
居酒屋にはいろんなお客様が来ます。お酒の入る場所ですから、イライラした人、理不尽な人にも当たります。まともに受け止めたら、心がもちません。
だから私はこう教えていました。
「ピエロになりなさい」
お客様の前では、笑顔の接客係を演じる。つらい態度をぶつけられても、役として笑顔で受ける。そして——後ろを向いたら、キレ顔をしても構わない。
ふざけているようで、これは真剣な話です。ピエロとは「演者」のこと。舞台の上では役を演じ、舞台裏では素に戻る。接客で傷つくのは、素の自分でお客様と向き合ってしまうからです。「今の自分は役だ」と一枚かませるだけで、理不尽は「自分への攻撃」ではなく「役への出来事」になる。
接客が苦手な人ほど、この割り切りが効きます。演技でいいんです。むしろ演技だからこそ、続けられるんです。
型4:目線は、お客様より下に
最後は、居酒屋ならではの体の型です。
接客のとき、目線はお客様より下に。
居酒屋のお客様は座っています。立ったまま注文を聞くと、どうしてもお客様を見下ろす形になる。本人にその気がなくても、見下ろされる側は無意識に圧を感じます。
だから、注文を聞くときは軽く腰を落とす、かがむ、膝をつく——店のスタイルに合わせて、目線の高さをお客様と同じか、少し下に持っていく。
たったこれだけで、同じ言葉でも伝わり方が変わります。謙虚さは心で示すものではなく、目線の高さで示すもの。これも立派な「型」です。
まとめ:性格を変えるな、型を着ろ
- とりあえず笑顔——感情じゃなく装備。制服と一緒に着る
- 呼ばれたら必ず返答——行けなくても「少々お待ちください」の一声。無視だけが客を怒らせる
- ピエロになりなさい——客前は演技、裏でキレ顔OK。役を演じれば素の自分は傷つかない
- 目線はお客様より下——謙虚さは目線の高さで示す
4つとも、才能もセンスも要りません。全部「その通りに動くだけ」の型です。
接客業は、明るい人の仕事ではありません。型を着られる人の仕事です。「いらっしゃいませ」が言えなかった私が言うんだから、間違いありません。

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