「来週からリーダーやってもらうから」
ある日突然そう言われて、内心パニックになっている人へ。飲食に限らず、初めて「責任者」の肩書きがつく時って、だいたい心の準備なんてさせてもらえません。
先に結論を言います。
最初の責任者は、お飾りでいい。
無責任に聞こえるかもしれませんが、本気です。私は入社3ヶ月で居酒屋の代行責任者(店長が休みの日の責任者)を任されました。そして堂々と、お飾りでした。でも今振り返ると、あの「お飾り期間」こそが、3年後に本物の店舗責任者になるための一番の準備期間だったんです。
この記事を書いた人
| 名前 | 店長ほりちゃん |
| 経歴 | チェーン居酒屋 正社員10年 |
| 入社時 | 22歳。接客が大の苦手 |
| その後 | 3ヶ月で代行責任者 → 入社3年で店舗責任者 |
| 得意分野 | 焼き場・魚さばき・原価管理・スタッフ教育 |
辞令は、いつも雑にやってくる
その日、エリアマネージャーに言われた言葉は、たったこれだけでした。
「来週から代行だからな!」
以上。説明なし、研修なし、心の準備の時間なし。
こっちは入社3ヶ月。「いらっしゃいませ」がやっと言えるようになったばかりの人間です(その話は別の記事に書きました)。正直な感想は一つだけ。
「どーしよー」
かっこいい覚悟とか、燃える闘志とか、そんなものは一切ありませんでした。ただただ、どーしよー。それだけです。
蓋を開けたら、店は勝手に回っていた
そして迎えた、初めての「店長不在の夜」。
何が起きたと思いますか?
何も起きませんでした。
調理場にはベテラン。ホールにもベテラン。レジ締めまで、すべての持ち場に「その道のプロ」がいて、店は私が何かするまでもなく、いつも通りに回っていく。私がやったことといえば、責任者として「そこにいた」こと。ほぼそれだけです。
つまり、お飾りです。
当時は少し情けなくも感じました。でも10年経った今なら、はっきり言えます。あれで正解でした。
「お飾り」には、ちゃんと意味がある
責任者の肩書きだけあって実務はベテラン任せ。一見無意味に見えますが、お飾り責任者には3つの意味があります。
1. 責任の所在をつくる
店に「最終的に責任を取る人」が一人いる。これだけで店は安心して回ります。何か起きた時に「決める係」が明確なこと自体に価値がある。逆に言えば、何も起きない日の責任者は、暇でいいんです。
2. 「回る店」を特等席で観察できる
お飾りの間、私は暇でした。その暇な時間で見えたものがあります。ベテランたちがどう動き、どう声を掛け合い、どこで手を抜いてどこで絶対に抜かないか。うまく回っている店の仕組みを、責任者の視点で観察できる——これは新人のうちにしか手に入らない学びでした。
3. 会社の「試運転」に応える
会社側から見れば、代行責任者は「こいつに任せて店が壊れないか」の試運転です。ここで変に張り切って空回りするより、無事に一日を終えて店を返すほうがずっと信頼されます。実際、この試運転の積み重ねの先に、3年目の店舗責任者がありました。
新任がやりがちな失敗:仕切ろうとする
逆に、一番やってはいけないのがこれです。
回っている店を、仕切り直そうとすること。
肩書きがつくと、人は「何かしなきゃ」と焦ります。指示を出したくなる。変化を起こしたくなる。でもベテランが作り上げた流れは、新任の思いつきより大抵うまくできています。そこに口を出すのは、動いている機械に手を突っ込むようなものです。
新任の最初の仕事は、仕切ることじゃない。
回っている店を、壊さないこと。
指示は、店が回らなくなった時のためにとっておけばいい。それまでは観察して、覚えて、ベテランが気持ちよく働ける空気を守る。それで十分、責任者の仕事です。
まとめ:お飾り上等
- 辞令は雑に来る。「どーしよー」でいい。みんなそこから始まる
- 回っている店なら、責任者はお飾りで正解。無事に一日を終えて店を返すことが最初のミッション
- 暇な時間は観察に使う。回る店の仕組みは、責任者席からしか見えない
- 仕切るのは、本当に決断が必要になった時だけ。新任の仕事は「壊さないこと」
初めてのリーダーで緊張しているあなたへ。大丈夫、店はあなたが思うより強い。まずはお飾りとして、堂々とそこに立っていてください。
本物になるのは、それからで間に合います。

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