アルバイトが次々に辞めていく店と、何年も続く子が多い店。
その差は、待遇でも立地でもなく、シフト表に出ます。
シフトを「人数を埋める作業」だと思っているうちは、たぶん人は定着しません。私が居酒屋で店舗責任者をやっていた頃、シフト作りで何を考えていたのか——実際にやっていたことを、そのまま書きます。
基本の回し方:週単位・締切は日曜
まず仕組みから。私の店では、こうしていました。
- アルバイトさんに希望を出してもらう方式
- 1週間単位でシフトを組む
- 締切は日曜
週単位というのがポイントで、学生さんやフリーターの予定に合わせやすく、希望も通しやすい。1ヶ月先の予定を出させると、どうしても「その日やっぱり無理です」が増えます。変更の少ないサイクルにしておくと、現場も本人も楽です。
そのうえで、集まった希望を並べて、ここから先が本番。「誰をどこに置くか」を考えます。
シフトで一番気をつけていたこと:責任者が弱い日を作らない
私がシフトで一番重視していたのはこれです。
代行責任者の日には、仕事ができる強めのアルバイトを入れておく。
代行責任者とは、店長が休みの日に店を任される担当のこと。私自身、入社3ヶ月で代行になったので分かるのですが、代行はまだ経験が浅い。判断に迷う場面が必ず出てきます。
そこに、経験の浅いアルバイトばかりを組み合わせたらどうなるか。その日だけ、店が急に弱くなるんです。
だから代行の日ほど、頼れる古株を配置する。代行が困ったときに聞ける相手がいる状態を作っておく。これは代行本人のためでもあるし、その日に働く全員のためでもあります。
新人は「自分と同じ日」に、7日間かぶせる
もうひとつ、必ずやっていたこと。
新人アルバイトは、私が出勤する日にシフトを入れる。しかも7日間くらいは意識してかぶせる。
理由はシンプルで、新人を放置しないためです。
新人教育は最初の3日が勝負だと以前書きましたが、教える人がその場にいなければ、3日どころか何も始まりません。入ったばかりの子が、知らない先輩ばかりの中に一人で放り込まれる——これが一番、人が飛ぶパターンです。
7日間かぶせておくと、こうなります。
- 分からないことを、その場で聞ける相手が必ずいる
- 教えた内容が、次の出勤日に続きとして積み上がる
- こちらも「どこまでできるようになったか」を目で確認できる
新人が辞めるかどうかは、最初の1週間で誰と働いたかでほぼ決まります。シフトはその一週間を設計する道具です。
嫌がられるシフトの正体
逆に、アルバイトから見て「そのシフト、ちょっと…」となるパターンもあります。
私が気をつけていたのは、人が足りない日に、代行責任者と組ませることでした。
考えてみれば当たり前で、働く側から見れば「忙しいのに人が少ない、しかも判断する人も経験が浅い」という日です。誰だって不安になる。責任感の強い子ほど、その日の負担を全部かぶることになります。
これが続くと、その子は静かに離れていきます。辞める理由は「きつかったから」ではなく、「守ってもらえなかったから」なんです。
希望が通らなかったときは、一言謝る
希望制でシフトを組んでいても、全員の希望が通ることはありません。 人が足りない日もあれば、希望が重なる日もある。
そういうとき、私が必ずやっていたことがあります。
一言、謝る。
「ごめん、今回この日どうしても人が足りなくて。入ってもらえる?」と、こちらから頭を下げる。ただそれだけです。
黙って希望と違うシフトを貼り出す店長は、けっこういます。でも受け取る側からすれば、「出した希望が、どう扱われたのか分からない」のが一番きつい。無視されたと感じます。
一言あるかないかで、同じシフトでも受け取り方はまったく変わります。納得は、内容ではなく手続きから生まれる——シフトを組んでいて、これは何度も実感しました。
当日の欠勤が出たとき、どう埋めるか
シフトを丁寧に組んでいても、当日の欠勤は起きます。体調不良、急用。これは避けられません。
私の対応は、段階が決まっていました。
① 1人までなら、出勤しているメンバーで乗り切る
まずここです。休みの子に片っ端から電話をかけて呼び出すのは、私はやりませんでした。休みの日は休みの日ですし、それを繰り返すと「この店はいつ呼ばれるか分からない」という空気になります。それこそ人が辞める原因です。
1人抜けたくらいなら、その日いるメンバーで回す。段取りを組み替えれば、たいてい何とかなります。
② 2人以上抜けたら、近隣店舗にヘルプを頼む
さすがに2人以上が同時に抜けると、店が回りません。そのときは近隣の系列店に連絡して、人を貸してもらえないか聞きます。
チェーン店の強みが出るのがここです。同じマニュアル、同じオペレーションで動いているので、他店のスタッフでも即戦力になる。個人店ではこうはいきません。
大事なのは、早い段階で連絡することです。ピークに入ってから「やっぱり無理です」では、向こうも動けません。欠勤の連絡を受けた時点で、その日の人数を数えて判断する。この初動の速さが、その日の店を決めます。
辞めない店のシフト表に共通すること
ここまでの話をまとめると、辞めない店のシフト表には、こういう性質があります。
| 観点 | 辞めない店 | 辞める店 |
|---|---|---|
| 弱い日 | 責任者が浅い日は、強い人で補強してある | 弱い日をそのまま放置 |
| 新人 | 教える人と必ずセット | 「空いてる枠」に入れるだけ |
| 負担 | きつい日が特定の人に偏らない | いつも同じ子がしんどい日担当 |
| 希望 | 通せる範囲で通っている | 何度出しても通らない |
要するに、「その日を働く人の目線でシフトを見ているか」という一点です。
人数さえ揃っていれば店は回る——と考えている店長は、たぶん自分では気づかないまま人を減らしていきます。数字の上では成立していても、現場に立つ人にとっては全然ちがう一日になるからです。
まとめ:シフトは「人数合わせ」ではなく「組み合わせ」
- 希望制・週単位・締切は日曜。サイクルが短いほど希望は通しやすい
- 代行責任者の日には、強いアルバイトを添える。弱い日を作らない
- 新人は自分と同じ日に、7日間かぶせる。放置が一番人を減らす
- 人手不足の日に経験の浅い組み合わせを作らない。守られていない実感が退職につながる
シフト表は、店長がスタッフをどう見ているかが一番はっきり出る書類です。
埋まっているかどうかではなく、「自分がこのシフトで働きたいか」を一度確認してみてください。人が辞めない店は、たいていそこを考えています。


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